======9. 雑感(振動、信頼性など)====== ---- =====1. 振動がHDDに与える影響===== (2015.07.31)\\ HDDが稼働中に振動を受けるとその性能に影響があることはその構造・動作原理の上から当然で、広く知られていました。\\ このため従来から様々な防振対策が考案され、実施されてきました。\\ 近年のHDDの大容量化に伴い、記録密度が高くなってきた等の要因で、従来よりも更に振動がHDD性能に与える影響が大きくなってきたと感じています。\\ Webを検索しても振動がアクセス性能に影響を与えているとの記事を見かけます。その影響はそれほど大きな性能低下ではないとの記事内容ですが、どの程度の影響なのでしょうか?\\ リアルタイムHDDテスター:HDT-201A/HDT-101Aを用いて、振動がHDDに与える影響を計測することが可能です。\\ また、防振対策の効果も把握することができますので、ここで一例を紹介します。\\ 測定対象は3.5” 3TB HDDです。このHDDの最大転送性能は150MB/sを超えるため、SATA2に対応したHDT-201Aを用いた計測例を紹介します。 振動がHDDに与える影響は、転送性能性能、応答時間分布特性、リアルタイムモニタで把握できます。ここでは、稼働環境の違い(防振対策の有無)を比較してみます。\\ 次に掲げるグラフのうち、左図は振動対策を施さない状態、右図は振動対策を施した状態での計測結果です。\\ 両図を比較すると、転送性能特性と応答時間分布特性では書込み(青色のグラフ)は振動の影響を受けたことによる性能の低下が確認できます。また、応答時間分布特性によって振動対策の効果を定量的に把握することが可能です。 **転送性能特性**\\ {{:jp:hdt:vib-no_absorb-thruput.png?direct&300|throughput-no_absorber}}{{:jp:hdt:vib-absorb-thruput.png?direct&300|throughput-absorber}}\\ HDT-201A/HDT-101Aの転送性能特性は最大値-最小値表示で表示されています。このため、振動の影響を受けたことによる性能低下は縦方向の幅の広がりで把握できます。\\ グラフの青色は書込み、橙色は読出し、書込みと読出し性能が重なった性能である部分は紫色で表示されています。 **応答時間分布特性**\\ 下の応答時間分布特性では防振対策の有無によってヒストグラムの分布に違いが見られます。\\ 次の2つのグラフに於いて、左図は振動対策を施さない状態、右図は振動対策を施した状態での検査結果です。\\ {{:jp:hdt:vib-no_absorb-profile.png?direct&300|profile-no_absorber}}{{:jp:hdt:vib-absorb-profile.png?direct&300|profile-absorber}}\\ 左図の防振対策を施していない場合は応答時間が長い領域(20mS以上の領域)に分布が多く、振動の影響をより受けていることが分かります。\\ **リアルタイムモニタ**\\ {{:jp:hdt:vib-absorb-rtm.png?direct&300|rtm-absorber}}\\ リアルタイムモニタでは、最小/平均/最大応答時間の3種類がリアルタイムに観測できます。特に振動の影響が顕著に現れている場合には影響の把握に便利です。\\ \\ ---- =====2. Hard Drive Reliability Update – Sep 2014, Backblaze Blogから===== (2015.08.04)\\ オンラインストレージサービス会社:Backblazeの「Hard Drive Reliability Update(2014年9月)」によると、Seagateの3TBモデル「ST3000DM001」は比較的高い故障率であると報告されています。 Hard Drive Failure Rates by Model [[https://www.backblaze.com/blog/hard-drive-reliability-update-september-2014/|Backblaze Blog]]\\ 同HDD:ST3000DM001(新品、Power-On Hours:200、Microcode Version:CC43)をHDT-201Aで検査した結果を紹介します。\\ 実は、たまたま評価用に購入していたHDDでしたが、一般的な応答時間分布特性とは明らかに異なる特性であったため、個体不良の可能性を含めマークしていたHDDでした。但し、未だ数百時間の検査ですが、今に至るまで、機能的には問題はなく、正常に動作しているHDDです。\\ **転送性能特性:ST3000DM001**\\ {{:jp:hdt:ST3000DM001-thruput.png?direct&300|thruput-ST3000DM001}}\\ **応答時間分布特性:ST3000DM001**\\ {{:jp:hdt:ST3000DM001-profile.png?direct&300|profile-ST3000DM001}}\\ 転送性能特性からは、HDD外周領域で200MB/sを超える性能であり、高速なアクセス性能であることが分かります。また、グラフからは特に問題があるようには見えません。\\ しかし、応答時間分布特性は、書き込み時(グラフの青色)に20mSを超える時間領域の応答分布の総計は800カウント近くに達し、他の型式の一般的なHDDと比較すると、長い応答時間領域は極めて多い分布となっています。\\ ※尚、本ST3000DM001の計測に於いて、上に紹介した転送性能特性および応答時間分布特性は振動対策を施して計測しています。 ----